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ファクタリングに手を出す前に――銀行の経営企画室長が、社長を本気で止めた理由

ファクタリングに手を出す前に――銀行の経営企画室長が、社長を本気で止めた理由

同じファクタリングでも、銀行の反応はまったく違った

ファクタリングを使っていた会社に、私は何社も関わってきました。その中で、銀行の反応がまったく違った2つの会社があります。

1つ目は、元請けの仕事をしている製造業の会社です。ふだんの運転資金のために、ファクタリングを使っていました。銀行からは、何も言われていません。この会社は入金と出金の時期の差が短く、売掛金が少し早く現金に変わるだけだからです。手数料は銀行の利息より少し高めでしたが、それだけの話でした。

2つ目は、銀行の依頼で私が事業再生に入っていた会社です。この会社では、月に1回、社長と二人で銀行へ改善の進み具合を報告に行っていました。報告先は支店ではなく本店で、私に依頼をしてきた経営企画室の室長が相手です。

ある日、報告が終わって雑談をしていたときのことです。社長が何気なく、「ファクタリングや、銀行の子会社からもお金を調達したい」と口にしました。

その瞬間、室長の顔が変わりました。

「それはダメだ」

怒ったのは、社長のためです。室長はこう続けました。

「一度手を出すと、二度と銀行との窓口が閉じてしまうぞ」

そして最後に、こうくぎを刺されました。

「銀行はね、表向きはいいけれど、裏では結構怖いところだから、うかつに言うもんじゃない」

同じファクタリングでも、会社の状態によって、銀行の見方はここまで違うのです。

ファクタリングとは

ファクタリングは、まだ入金されていない売掛金を、ファクタリングの会社に買い取ってもらい、先に現金を受け取る仕組みです。

たとえば、100万円の請求書があり、入金は2か月後だとします。これを手数料10%で売ると、90万円が数日で入ります。借金ではなく、売掛金を「売る」取引です。

やり方は2つあります。

  • 3社間:取引先にも知らせて、取引先からファクタリングの会社へ直接支払ってもらう。手数料は3〜5%ほどと言われています。
  • 2社間:取引先には知らせず、入金されたお金を自分の会社からファクタリングの会社へ渡す。手数料は10〜20%ほどと言われています。

資金繰りが苦しい会社ほど、「取引先に知られたくない」という気持ちから、手数料の高い2社間を選びがちです。

手数料を「年利」に直すと

先ほどの例で考えてみます。100万円の請求書を手数料10%で売ると、2か月で10万円の費用です。1年に直すと、60%を超えます。

計算はこうです。

手数料の割合 × (12か月 ÷ 入金までの月数)
= 10% × (12 ÷ 2)
= 10% × 6
= 60%

2か月で10%の費用がかかる取引を、1年に6回くり返すのと同じ重さです。しかも、実際に手にしたお金は90万円なので、90万円に対して10万円の費用と考えると、1年で約67%になります。

銀行の融資の金利が年に数%であることと比べると、どれだけ重い負担かが分かります。

なぜ、苦しい会社のファクタリングを、銀行は嫌がるのか

1. 「どこからも借りられなくなった」という合図に見える
銀行から見ると、資金繰りが苦しい会社のファクタリングは、「銀行や公的な融資の枠を使い切り、もう借りられなくなった」という合図に映ります。年に数%で借りられるはずのお金を、何十%もの手数料を払ってまで現金にする。その状況そのものが、経営の危険信号と受け止められます。

2. 銀行が当てにしていた売掛金が、先に抜かれる
売掛金は、会社がこれから返済するお金の元です。銀行によっては、融資のときに売掛金を担保にする契約を結んでいることもあります。その売掛金を、銀行の知らないところで売ってしまえば、契約違反になるおそれがあり、銀行は「返してもらえるはずのお金が減った」と見ます。

3. 手数料で、資金繰りがさらに苦しくなる
今月の不足をファクタリングで埋めると、来月に入るはずの売掛金が減ります。すると来月も足りなくなり、また売掛金を売る。このくり返しに入ると、手数料の分だけ会社のお金は確実に減っていきます。

4. 気づいたときには手遅れになりやすい
特に2社間は取引先に知らせないため、外から見えにくいまま資金繰りが悪くなっていきます。銀行が試算表や決算書の手数料に気づいたときには、資金がもう底をつきかけている。そうした例が少なくないため、銀行は強く警戒します。

銀行の子会社なら、大丈夫なのか

大手銀行には、ファクタリングを扱う子会社もあります。手数料は低めですが、審査は厳しめです。

ただ、冒頭の室長は、銀行の子会社からの調達も含めて止めました。事業再生の最中の会社が、新しくお金を引っぱろうとすること自体が、銀行から見れば危うい行為だからです。どこから借りるかではなく、会社の状態が問われているのです。

隠さないこと

ファクタリングの手数料は、試算表や決算書に「売上債権売却損」などの科目で表れます。中には、科目の名前を変えて目立たなくする方法をすすめる業者もいますが、私は勧めません。

銀行が見ているのは、数字だけではなく、隠さずに見せる姿勢です。隠していたことが分かれば、それまで積み上げた信用が一気に崩れます。

使ってもよい場合、やめたほうがよい場合

使ってもよいのは、次のような場合です。

  • 入金と支払いの時期が少しずれるだけで、本業はきちんと利益が出ている
  • 数日から数週間のずれを埋めるだけで、来月以降は本業のお金で回る見込みがある

やめたほうがよいのは、次のような場合です。

  • 赤字や、構造的なお金の不足を埋めるために使う
  • 今月も来月も、くり返し使うことになりそう
  • リスケ中や事業再生の最中で、銀行に支えてもらっている

手を出す前に

資金繰りに困った社長から「ファクタリングを使おうと思う」と相談されたら、私はまず「なぜ、そこまでお金が足りなくなったのか」を一緒に見ます。売上が落ちたのか、売掛金の回収が遅れているのか、在庫が増えているのか、原価が膨らんでいるのか。

ファクタリングは、痛みを一時的に和らげる痛み止めのようなものです。その間に原因を止めなければ、かえって会社を苦しめることになります。

資金繰りが苦しいときに、まずやるべきことは、お金が出ていく原因を止めることです。支払いの調整やファクタリングは、そのあとです。

一人で判断するのがつらいときは、ご相談ください。ご相談は無料です。

※会社が特定されないよう、一部の設定を変えています。

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