今も報道番組で取り上げられています、北海道観光船の事故の件ですがこの会社に限ってではないのです。
その前に、観光で乗船され残念ながらお亡くなりになった方、心からご冥福をお祈りします。
報道番組を見るたびに、やるせない気持ちと胸が痛くなる思いでニュースを見ています。
さて、このような事故は、会社の大小にかかわらず、事故につながるようなことは、どこにでも起こり得る話なのです。
特に内部統制がとれておらず、社員教育や育成が行き届いていない会社ほど、人災による事故が大なり小なり発生しているのです。
実際私も、社長代行を受けた会社でも、死亡事故が発生してもおかしくない人災はありました。
今から10年以上にも前にもなります。
普段から仲良くしてもらっている会計事務所から、ある製造会社の経営者の話を聞いてもらえないかという相談がありました。
詳しい話は経営者と会った時に、その経営者から聞いてと言う事でしたので、経営者と会うまでは会社名だけは教えてもらいましたが、どういった内容なのかまでは全く分からないまま、指定された日時に会いに行ったのです。
指定された日の当日、朝早くから製造会社に訪問し、経営者に会うのですが、開口一番、何をいってきたかというと言うと「川原さん、私は明日からしばらく入院します。ここの会社の社長を引き受けてください」という話だったのです。
いきなりですよ。
そんなドラマみたいな話はあるかと言うぐらいの衝撃をうけたのです。
会社はそこそこ大きく、従業員も80名ぐらいるのに。
製造会社の社長は、明日から入院するから代わりに社長をやってくれと言われ、すんなり「はい分かりました」と言えるわけがありません。
経営内容を聞くと、10年近くも赤字で資金繰りが悪く、常に金融機関からの返済の催促がくる状況だとか・・・・・・
だいたい赤字が続き、常に資金繰りが厳しく、まして金融機関から返済の催促が来る会社って、内部統制が取れておらず、社員達は事なかれ主義的な人が多く、管理面は杜撰な会社が多いのです。
管理面というのは多岐に渡ってありますよね。人の管理、物の管理、資金の管理、車の安全管理、商品を作る管理など、あげればきりがありません。その製造会社の社長から、どうしてもどうしても懇願されるので、私が折れた感じで社長を引き受けたのです。(一瞬、この社長逃げるのでないかと思ったのですが、あまりにも懇願されるで、引くに引けず、しばらくの間という条件で社長を引き受けたのです)
社長を引き受けてから1週間、製造部門の管理者から割れたヘルメットを持ってきて、笑いながら、何があったのかの説明にきたのです。
それも口頭で。
管理者の話によると、ちょっとした手違いで重機がヘルメットにあたって割れ、機械も人も問題ありませんといってきたのです。
管理者の話の内容を鵜呑みしたわけではないですが、とりあえず聞くだけ聞きました。
それから3日後、他部署の社員と話す機会があったので、割れたヘルメットの件について何気なく聞いたのです。
すると、その社員から驚くべく内容が返ってきたのです。
「あの件ですね。一歩間違ったら人一人死んでましたね。それも自社の社員ではなく、重機を点検にきた外部検査員の方が・・」と言い始めたので、慌てて管理者およびその現場に携わった社員を呼んでどういった内容なのかを問い詰めたのです。
話を聞けば聞くほど単純な過ちで、技術力のないものが重機を動かすミス、オペレーターの指示ミス、このミスによって、外部の重機点検業者が命をさらされたのです。
まして、こういった細かいミスが過去からあって、技術や知識などの教育や育成もしてない、管理者に至っては「大きな事故にならないから、そんなに叱らなくてもいいでしょう」という始末。
私は、彼らの話を終わった後、怒りと、仮に人が亡くなっていたらということを想像したら背筋が凍ったことを覚えています。
その後の話は割愛しますが、言いたいことは、このような会話はどこにでもあって、不安を抱えている会社は沢山あるということです。
これは経営不振である会社ばかりではありません。
会社が大きくなればなるほど隠ぺいをし、事故になれば報道番組にニュースとして取り上げられているのです。(ニュースになったほとんどの事故が杜撰な管理なのです)
強く経営者に言いたいことは、悲しい事故にならないよう、社内を隅々まで見渡し、場合によっては社員にヒアリングするぐらいの気持ちで事業運営をしていただきたいものです。
因みに私が社長代行した製造会社は、徹底的に社内改善を実施し、社員だけではなく協力業者に至るまで教育と育成を行い、たった1年で業績が向上し、利益を黒字化させ、今もその会社は黒字を維持しながら業務を続けているそうです。
病気になった社長はどうなったか?
当然黒字になったら帰ってきましたよ。病気が治ったそうです。