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創業経営者の夢 未来につなぐ(事業承継)

数日前、私がご指導をさせて頂いている会社の会長の訃報を聞き、最後のご挨拶に行きました。創業経営者の人柄なのか多くの参列者がお見えになり、祭壇に飾られた笑顔が素敵な写真を見て、一人一人の思いを胸に最後のご挨拶をしていました。

当然ながら私も最後のお別れの挨拶をするのですが、祭壇に飾られた写真を見つめていると、ふと初めて会った時に交わした言葉を思い出したのです。その言葉は「川原さん、この会社を良くしてほしい、そして経営陣を立派な経営者になれるよう教育を頼みます」と頼まれた言葉でした。私は心の中で「会長、会長との約束、果たしましたよ。どうか安心してください」とお別れさせていただきましたが、感慨深いものがありますね。

お別れした創業経営者との出会いは、ご子息の社長が私のHPを見て、創業経営者が私の話を聞きたいと言うことが、初めての出会いでした。

昔気質の人で間違ったことは嫌い、資料関係は手書き、気質の激しい創業経営者でしたが「川原さん、私はもう82歳になり、従業員を束ねるのはきつい、息子達や幹部連中は、全く動かない、今は黒字で来ているけれど、黒字のうちにダメなら会社を潰してもらっても構わない、頼みます」と深々と頭をさげられたのです。

私は創業経営者の約束のもと、経営者になっている社長に対しては、時間の許す限り、経営というものは原理原則があって、利益が出る会社というのは利益が出る要因があり、利益がでない会社は、利益が出ない原因があるとことを教え、幹部社員には、管理職の5つの責任であったり、管理職の重要性であったり、部下を育成すると言う難しさ教え、経営陣と管理職が一致団結して、年度ごとの経営方針や目標数字の達成であったり、創業経営者が口をださなくてもいいような会社を作らせていただきました。

その会社を見届けてから安らかに人生に幕を閉じたのです。

➢事業承継は期間と期限が大事

今回は出会いがあったので事業承継することができましたが、もしこれが出会いもなく、またコンサルを受け入れることもしなかったら、どうなっていたのか、考えただけでも恐ろしくなりますね。

私は今まで多くの経営者にお会いしました。経営者には経営者なりの問題を抱え、日々奮闘しているのですが、外部の人の知恵や知識を取り入れてまで悩みを改善したいと思わない経営者が多いです。

確かにご自身で改善したいというのはあるでしょう。また外部の人の人間性であったり、費用面においても相談しなければいけないことも理解できますが、ほとんどの経営者は改善しなければいけないと思っても改善できずに終わるのです。その後に待ち受けているのが後に残された後継者であったり、経営幹部の悲惨な状況なのです。

多くの中小企業や小規模企業の経営者の高齢化は進行しています。1995年の中小企業の経営者の平均年齢は約47歳だったのですが、2015年には約66歳となり、この20年間で大幅に高齢化しております。このまま先に進むと現役を引退する平均年齢は約70歳前後まで上がっていると予測されているので、事業承継の必要に迫られている企業が沢山あることが伺えます。

➢事業承継する際の、本当の問題とは

経営者ご自身の年齢が進み、高齢になって事業承継をしなければいけないことに気付いたり、あらゆる問題が解決するまでは後継者にバトンタッチしないと考える経営者がいますが、「日常の業務の忙しさ」と「高齢になっても体が動く」この二つがある限り、事業承継をしなければいけないという意識にはならないのです。

事業承継を行うには様々プロセスと、それに伴う問題が発生し、事業承継するには5年以上の時間がかかると言われております。実際私自身も事業承継に携わってみると5年ぐらいはかかっているのです。

では何が問題なのか。親族内での事業承継する場合の税制面なのか。それとも後継者の育成なのか。色々な専門家は税制面であったり、後継者の育成と言う方も見えます。

仮に親族内で事業承継する場合には、確かに借入金や株価の買い取りのための資金面と言う問題が発生してくるでしょう。これらについては資金捻出のため金融機関の融資や事業承継税制など、解決策は探せばあるはずです。

また、後継者の育成に時間がかかるのは確かですが、後継者ばかりに経営のイロハを教えることが大切なのでしょうか。

私は今まで多くの会社の経営に携わってみて思ったことは、後継者の経営のイロハも大切ですが、一番大切なことは、後継者と管理職者がお互いの立場を理解し、一緒になって利益を出し続ける会社にしていこうという意志があるのかどうかが問題なのです。

よく中小企業白書をみると後継者がいない会社が多いと言われていますが、いないのではなく、継ぎたくても古参や管理職者によって、経営者になっても経営者として見られないので、経営者になりたくないという後継者が多いのです。

➢M&Aでは何も解決できない

よくM&Aを事業としている仲介会社から、「後継者がいないのでしたら、会社の売却をしませんか」という電話やDMなどの案内を見かけますね。まして、「どんな会社でも売れない会社はない」と文章中に記載があったり、口頭でも言われたりもしたら、万が一の時にそなえ、選択肢の一つとして入れておこうと思うのですが、「どんな会社でも売れない会社はない」というのはありえないのです。

仲介会社によっては、着手金を目的にどんな会社でもいいから相談をうけたり、成功報酬のみの仲介会社は、なるべく無駄な動きが少ないよう、M&Aの成約出来るかどうかをシビアに見極めて相談に乗ります。仮にシビアに見極め売却支援したにもかかわらず、成約に至るのはわずか2割程度なのです。

なぜ売却ができないのか、簡単にいったら売上規模が大きくても連続して利益が出ていない会社、借入金が売上の半分ぐらいある会社(債務超過)、従業員が数人程度で、従業員の能力に依存している会社などといった会社は売却できる可能性はほとんどありません。もし、仮に皆さんが会社を買うと思ったら何を基準としますか。そこそこ規模があって利益が出ている会社を選択するでしょう。

➢まとめ

私は延べ3000社以上の会社の経営に携わってきました。

振り返ってみると事業承継であったり、M&Aであったり、大事なことは利益を出し続け、仮に経営者が変わっても内部統制が取れているような組織です。しかし残念ながら多くの会社は、人が定着しない、または育たない、利益を出したいが組織がまとまらないといった会社ばかりなのです。

そういった環境では事業承継やM&Aを考えることは残念ながら難しいのです。今後の経済環境は更なる厳しさを増します。経営者がご健在のうちはいいでしょうが、人は必ず終焉がきます。だからこそ、早めの対策が必要なのです。

今回、私が担当させて頂いた会社の創業社長は86歳で天に召されましたが、喪主である社長からは「川原さん、創業社長が亡くなったのは悲しいですが、承継が出来なかったら幹部社員とは溝ができたまま事業をしていかなくてはいけません。川原さんとの出会いがなかったら、今頃どうなっていたのかと思うと日々悩むばかりでした。ありがとうございます」 とありがたい言葉を頂き、葬儀会場を後にしたのです。(合掌)

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