「売上さえ上がれば、資金繰りも楽になる」。多くの経営者がそう考えます。しかし、売上を追うほど利益が減り、お金が残らなくなる会社が少なくありません。
先に見直すべきは、売上ではなく利益率です。利益率をたった1%上げるだけで、売上を増やすのと同じ利益が、より確実に残ります。そして、利益率を上げるために欠かせないのが、本当の意味での「原価管理」です。
売上を上げると、なぜ利益が減るのか
売上を増やそうとすると、現場では次のようなことが起きます。
- 受注を増やすために、利益の薄い仕事や短納期の仕事まで引き受ける
- 仕事が増えて、二度手間やミスが増える
- 残業が増え、材料費や外注費がふくらむ
- 品質が落ちて、手直しやクレームが増える
その結果、「売上は上がったのに、利益は減った」という状態になります。お金が足りなくなり、借り入れを増やし、その返済のためにさらに売上を追う。出口のないトンネルで、アクセルを踏み続けるようなものです。
数字で比べてみる
売上20億円、利益率10%、利益2億円の会社が、あと2,000万円の利益を出したいとします。方法は2つあります。
【売上を増やす場合】
売上を2億円増やして22億円にすれば、利益率10%のままなら利益は2.2億円になります。ただし、先ほどのとおり、売上を増やすと利益率は下がりがちです。計算どおりにはいきません。
【利益率を上げる場合】
売上は20億円のまま、利益率を10%から11%に、1%だけ上げます。それだけで利益は2.2億円になります。仕事を増やさないので、現場の負担も増えません。
同じ2,000万円でも、確実に残るのは後者です。
ある会社で起きたこと
借入金が増え続け、立て直しが必要になったある会社で、私は最初にこう方針を出しました。
「利益率の低い仕事と、短納期の仕事は受けない」
社長からは「それでは仕事がなくなり、資金繰りがもっと苦しくなる」と反論がありました。その気持ちはよく分かります。しかし実態を調べると、受注の時点で利益率は13%に届かず、工事が終わるころには10%を切っていました。働けば働くほど、会社が沈んでいく状態だったのです。
仕事の選び方を変え、現場の仕事のやり方を一つずつ改善していった結果、この会社は数年かけて立ち直っていきました。
「原価管理」と「原価集計」は違う
利益率を上げるには、原価をコントロールする必要があります。
いろいろな会社で「原価管理はしていますか」と聞くと、多くの会社が「やっています」と答えます。ところが中身を見ると、材料費・外注費・経費など、すでに使った原価を積み上げて、数字にまとめているだけのことがほとんどです。
これは原価管理ではなく、「原価集計」です。過去の結果を集めているだけなので、いくら細かく集計しても、これからの利益は変わりません。
本当の原価管理とは、未来に向かって原価をコントロールすることです。目標とする利益を出すために、これから行う仕事の原価をどう抑えるのか。そのために、仕事のやり方をどう変えるのか。ここまで決めて初めて、原価管理と言えます。
当社では、これを「利益先行管理」と呼んでいます。年度の途中で、今の実績と目標とする利益との差を数字で出し、その差を、残りの仕事でどう埋めるかを決めて、実行します。
ここで大事なのは、「どの費用を下げるか」を話し合うことではない、という点です。費用は、勘定科目に並んだ結果の数字にすぎません。数字だけを見て「外注費を減らせ」と言っても、現場は何も変わりません。
変えるべきなのは、その数字を生み出している仕事のやり方です。二度手間はどこで起きているのか。手戻りやミスはなぜ繰り返されるのか。誰が、いつまでに、何を改善するのか。原価の改善とは、現場の仕事を一つずつ改善していくことなのです。
売上が上がっても、粗利益が残らなければ意味がありません。まずは自社の「原価管理」が、本当は「原価集計」になっていないか、確かめてみてください。
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