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私が「指導を断念」した本当の理由。――老舗ブランドを倒産させた「社長不在」の病い

1. カリスマが遺した「負の遺産」と「三流組織」
かつて、百貨店に名を連ねた老舗企業の倒産を、私は最前線で目撃しました。 先代社長は圧倒的なカリスマ。しかし、彼が遺したのは輝かしい看板だけで、その中身は「組織の3要素」が皆無な「三流以下の組織」でした。 社員は先代の顔色を伺う「手足」に過ぎず、自分で考え、判断する「脳」を持たない。そんな爆弾のような組織を、先代は息子である二代目に、何の整備もせず丸投げしたのです。

2.「経営者」が消えた会社
先代への反発から無謀な投資を繰り返し、資金繰りが悪化した二代目。私が金融機関の要請で入った時、最大の問題は「社長が経営をしていない」ことでした。社長は社長室に閉じこもり、数字を見ず、現場にも行かない。自分に厳しい意見を言う古参を排除し、周りは物言わぬイエスマンばかり。組織の結節点となるべき管理職も、責任の定義が曖昧なため、誰も判断を下そうとしませんでした。

3.コンサルタントが「経営代行」になるという悲劇
指導が進むにつれ、私はある「禁じ手」に追い込まれていきました。 社長が動かない。管理職は指示を求めてくる。現場は日々動いており、判断を待っています。私は、組織を動かすために、コンサルタントという立場を超え、末端の社員にまで直接指示命令を出すようになっていました。

本来、経営コンサルタントは「経営の指導」をする存在であり、実務を回す「経営者」そのものになってはいけません。 しかし、気づけば私が「実質的な経営者」となり、私の指示がなければ組織が1ミリも動かないという、歪な状態に陥っていました。

4.私が「さじを投げた」瞬間
私は社長に何度も言い続けました。 「社長室に閉じこもるな。現場に出ろ。あなたが判断基準を示し、あなたが社員と向き合わなければ、組織は死ぬ」と。

しかし、社長は最後まで動きませんでした。 口うるさく言い続ける私に対しても、現場に対しても、社長は背を向けたまま。 私が経営を代行し続ければ、一時は会社は持つかもしれません。しかし、それは「組織の3つの柱」を立てるという私の仕事ではありません。私が現場から去った瞬間、この会社は崩壊する。そう確信した時、私は深い嫌気とともに、指導の中断を決断しました。

「社長が経営を放棄した会社を、外部の人間が救うことはできない」 それが、私がさじを投げた、痛恨の結論でした。

5.事業承継の本質:子供は「反動」に殺される
今、事業承継を拒む子供が多いと言われます。しかし、彼らは社長業が嫌いなのではありません。親が作り上げた「三流組織」と、そこから生まれる「反動の苦労」を押し付けられるのが嫌なのです。

先代がカリスマであればあるほど、後継者は「自分なりの色」を出そうと暴走するか、逆に無気力に社長室に籠もります。もし先代が、元気なうちに「組織の3要素」を整え、後継者が「経営のルール(仕組み)」の上で走れる環境を作っていたら、この老舗が百貨店から消えることはなかったはずです。

結論:あなたの会社に「経営者」はいますか?
いくら看板が立派でも、社長が社長室で「裸の王様」になり、外部の専門家に実務を丸投げしているようでは、その会社に未来はありません。

私はこの会社の倒産から、「三流組織を放置して承継させることの罪」を学びました。 あなたが今、後継者に渡そうとしているのは、自走できる「一流の組織」ですか? それとも、誰かが代わりに回さなければ止まってしまう「三流の機械」ですか?

手遅れになる前に、組織に「3つの柱」を。それが、後継者を守る唯一の道なのです。

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