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社員が定着しない本当の理由――給料を上げても、制度を整えても、人が辞めていく会社の構造

「また辞めるのか」
退職届を受け取るたび、経営者は頭を抱える。給料は同業他社より高い。残業も減らした。評価制度も導入した。それでも人は辞めていく。
多くの経営者は、この問題を「採用」や「人事制度」の問題だと考えがちだ。しかし、辞めていく社員の本音を聞くと、別の言葉が繰り返される。
「この会社、この先どうなるんですかね」

1,よくある対策が効かない理由

人手不足に悩む会社は、まず給与を上げる。次に福利厚生を充実させる。それでも定着しなければ、評価制度やキャリアパスを整備する。これらは間違いではない。ただ、効果が出ない会社には共通点がある。

社員が見ているのは「今の待遇」ではなく「会社の未来」だ。

給料が多少上がっても、5年後にこの会社が存在するか分からなければ、人は残らない。評価制度が立派でも、評価する側の人間が信頼できなければ、制度そのものが機能しない。特に、事業承継を控えた会社では、この現象が顕著に現れる。

2,社員が本当に見ているもの

名古屋のある製造業では、給与水準は地域でも上位だった。にもかかわらず、ここ数年で複数名が退職した。
社長は困惑していた。しかし、辞めていく社員の退職理由を並べると、ある共通項が浮かび上がる。
「承継後の会社の方向性が見えない」
「将来が不安」
「この先、どういう組織になるのか分からない」
彼らが辞めた理由は、給料でも仕事内容でもなかった。

3,これは制度の問題ではない

多くの経営者は、社員の離職を「評価制度の課題」として扱う。しかし、本質はそこにない。
社員が辞めるのは、制度が悪いからではない。次にこの会社を背負う体制が、自分たちの働く環境を守ってくれるか、会社を正しい方向に導けるか、そこに確信が持てないからだ。
先代が築いた信頼は、後継体制に自動的に引き継がれるわけではない。むしろ、何もしなければ信頼は急速に失われる。
後継者が現場経験を積む期間が短かったり、組織の歴史や成り立ちを理解する機会がなかったりすると、社員との間に距離が生まれる。

4,定着しない構造の正体

社員の定着問題は、表層では「待遇」や「制度」に見える。
しかし、その下には「誰がこの組織を率いるのか」という、もっと根本的な問いがある。
先代社長がどれだけ優れた経営をしていても、承継の過程で組織との信頼関係が十分に構築されていなければ、社員は不安を抱える。社員はそれを敏感に察知する。
給料を上げる前に、制度を整える前に、まず問うべきは「この組織を任せる体制は、社員から信頼を得られているか」ということではないか。
そして多くの場合、その答えは「まだ途上にある」だ。

5,信頼は、与えられるものではない

後継者が信頼を得るには、時間がかかる。ただ役職を与えるだけでは、組織はついてこない。
現場の痛みを知り、組織の歴史を背負い、社員と本音で向き合う。
その積み重ねの中でしか、経営者としての器は育たない。
人が定着しない会社の多くは、この「承継の構造」を見落としている。問題は人事制度ではなく、次の経営体制が組織を背負う準備ができているか、そしてそれを社員が感じ取れているかどうかだ。

この問題は、制度や人事の話では終わらない。
背景にあるのは、経営者がどんな「原理」で会社を導いているかだ。

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