「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」
皆さんは知っているでしょうか?この言葉は、今から200年以上前、米澤藩主(山形県米沢市)上杉鷹山の言葉です。 私が上杉鷹山の話をする時は、苦境にたった経営者や経営幹部に対して話をするのですが、上杉鷹山という方を知っていただくため話をしたいと思います。
米沢藩は山形県米沢市に藩庁を置いた外様中藩であり、 1601年関ヶ原の戦により会津120万石から米沢30万石に減封され,以後上杉家は1871年(明治4年)まで米沢に定着ました。 上杉鷹山は米沢藩9代目の藩主であり、戦国武将として名高い上杉謙信から数えて10代目、また 初代米沢藩主上杉景勝から9代目にあたり、鷹山が10歳の時に米沢藩主上杉重定の養子になったので、上杉謙信の義理の息子の子孫にあたります。
➢青年の志から壮大な変革劇
鷹山が上杉謙信から10代目の家督を継ぎ、米沢藩主となったのは、1767年(明和四年)、わずか17歳の時であります。当時の米沢藩は、財政的に貧窮し、衰退の一途をたどっていたのです。
かつて福島の会津125石を有していた上杉家の領地は、米沢30万石に減封になったあと、更に15万石に減らされ、会津時代の八分の一まで縮小し、借金の山を抱え、極端な赤字財政。家臣から農民まで、藩の経済は破綻状態でした。鷹山が藩主になる3年前には、もはや藩の存続は不可能であるとして、前藩主(上杉重定)が幕府に領地の返上を願い出ようとするほどです。
しかし、新しい青年藩主は、安易に悲観に流されたりはせず、それどころか、10代の若き鷹山は、米沢の地に自身の使命を定め、「ここに理想の国をつくろう!」と立ち上がのるです。
➢我が藩は蘇る!我に希望あり!
鷹山は藩主として米沢への第一歩として、時は晩秋。見渡す限り、痩せて荒れ果てた土地と廃嘘のような家々。人々の顔には生気がまったく感じられない。笑いもない。喜びもない。深刻な苦悩を映し出しており、状況のひどさを覚悟していたとはいえ、まさかこれほどとは、その荒廃ぶりに鷹山は驚かざるをえなかったのです。 米沢城に近づくにつれ、連れの家臣たちも「この国を変えるのは、もはや無理かもしれない」と思い始めましたが、そうしたなかでのこと。 鷹山は、側にあった煙草盆の炭に目を止めると、その消えかかる残り火を熱心に吹き始めたのです。そして、火をおこしたのを確かめる彼を、けげんそうに見つめていた家臣たちに、次のように説明したのです。
「まさに消えかかろうとする炭火でも辛抱強く吹き続ければ、明るい火をおこすことができる。同じように、この国と民が生まれ変わらないことがあろうか。今や、大いなる希望が我が胸によみがえった。私は、この炎を消さぬ」と。灰の中から残り火が再び燃え立つ様子に、彼は藩再興の希望を見いだすのです。
➢ケネディが最も尊敬した日本人
アメリカのケネディ大統領(第35代)といえば、「ニュー・フロンティア」の理想を掲げ、人々に希望を与えた指導者です。しかし残念ながら大統領は凶弾に倒れてしまいましたが。 このケネディ大統領、最も尊敬した日本人が上杉鷹山なのであります。 (日本人記者団がケネディ大統領に対して質問し、逆に日本人記者団が上杉鷹山を知らなかったことで閉口したエピソードがあります)
➢世界に光る先駆的な“民主宣言”
上杉鷹山は民衆を愛し、民衆のための政治を行った名君として知られ、彼は君主の心得として、次の三項目を内容とする指針を残しているのです。
一、自らの利益のために国家を用いてはならない 一、自らの利益のために人民を用いてはならない 一、人民のために君主があるのであり、君主のために人民があるのではない
この“民主宣言”が伝えられたのは、1785年(天明5年)、アメリカ独立宣言(1776年)の9年後、またフランス人権宣言(1789年)の4年前のことです。 身分差別の厳しい封建社会において世界に先駆ける形で残されたのではないでしょうか。
駆け足で話を書いてしまいましたが、なにせ、僅か17歳で藩主となり、亡くなる72歳まで国の再興をしながら、教育や新たな産業などを果敢に挑戦してきたのです。 現在においては、リストラと言う言葉がありますが、実はこの言葉を根付かしたのも上杉鷹山なのです。
ただし、ここでのリストラとは人員削減においての意味合いではなく、リストラとはリストラクチャリングの略で、広い意味で言うと再構築という意味であります。
私たちは、コロナ、ウクライナというかつて経験をしたこともないような事に巻き込まれ、職種によって経営難に陥っているところもあるでしょう。 だからと言ってネガティブになるのではなく、どのように回避できるのか、どのように良くしていくのかを真剣に考えれば何とかなるもんだと思います。 私たちはバブル崩壊、リーマンショック、狂牛病、あらるゆる経済難をのり超えてきたのですから。