今から12年前…NHK総合番組で放映されたと思いますが、タイトルは「倒産・再起までの150日」。
北海道旭川市のある食品加工会社の社長が、親から引き継いだ会社を倒産させ民事再生法適用の申請を決断。
引き受け手の会社への事業譲渡にこぎ着けるまでの、激動の日々に密着した45分の番組でした。
当時の経済はリーマンショックによって経済構造のあらゆる箇所でひずみが生じ、フィッチ・レーティングスによるギリシャ国債への格付けがニュースで踊ったと思えば、派生するようにアメリカのデフォルトに触れるニュースが色めき立っていました。
想像を超えた様々なことが、私たちが暮らす我が国の中…だけではなく、すべての国々を取り巻くこの世界の中で起こっているのを思い出します。
先述の番組で、同社の事業引き受けを承諾した会社社長の言葉が印象的でした。「あの人は、クソがつくほど真面目にやってきたのにな…」そう…誰もが必死で戦っていたのです。
社長も社員も取引先も。
そんな血の滲むような努力が報われないドライな事実は、「経営」というものの、あまりに非情で残酷なひとつの側面といえるのかもしれません。
中小零細企業においては、経営者といってもその一人ひとりの存在は本当に小さなものです。
大河に翻弄される木の葉のように、思うに任せぬことは数えきれません。しかし、その時代の激流の最中にあって、一歩一歩確実に先へ・上へと進んでゆく人とそうでない人がいます。
たとえ、つまづいたように見えても、再び起き上がり力強く前進を始める人とそうでない人もいます…その差はいったいどこにあるのでしょう。
先の話に戻ってみれば…債務に連帯保証をしていた社長個人は、膨大な借金を抱え自己破産することになります。
しかし、最後の最後まで従業員の雇用を守り、取り引き先の連鎖倒産を防ぐため、まさに我が身を投げ出して奔走されていました。
些細なきっかけでも切れそうになる気持ちを必死に繋ぎ留めながら、会社を、社員を、取引先を守ろうと最後の最後まで必死に奔走します。
そこには、人間が持つ「覚悟を決めた者」の強さが溢れていました。家族を守るため離婚も覚悟した社長に、大丈夫よと力強い言葉を返した社長夫人のけなげさもまた、何があっても最後まで共に戦おういう揺るぎない覚悟の表れであったのです。
倒産という厳しい現実は事実ですが、きっとこの方は未来に向けた力強いスタートを切っておられることでしょう。
時代が・環境が私たちの運命を決めるわけではありません。誰かが放つ光に照らされるだけなのか自ら光を放つのか。誰かに振り回されるのか、自ら人を振り回すのか。
経営者という、余人には伺い知れぬ戦いの中に身を置く私たちは、混沌とする今の時代の荒波を問答無用で泳ぎきっていかねばなりません。生き方の軸・考え方の軸の置き所で運命の歯車は如何様にも変わっていくのです。
そこに、負けられない戦いの勝敗を分かつものは何か…それは覚悟の差なのです。
今回、コロナが世界を脅かすことは誰しもが想像しなかったでしょう。
遠い国のことだ・自分には関係ないことだと思っていたことが次々と、息がかかるほど間近で起こっているのです。これから先は「何がおこっても不思議ではない」時代はきたのです。
だからこそ、より一層覚悟が必要なのです。