BLOG ブログ

経営者よ、経営と作業を間違えるな

会社がうまく回らなくなったとき、ほとんどの経営者は「目の前の問題」を何とかしようとする。
売上の減少、利益が出ない、人が次々と辞めていく。
気がつけば、社内には社歴の浅い社員ばかりが残っている。
相談内容は多岐にわたるが、現場で起きている「現象」は驚くほど似ている。
目の前で起きている問題を、何とかしたい。
そう考えるのは当然だし、その気持ちはよく分かる。


しかし、多くの場合、そこで行われるのは「その場をしのぐための対処」にすぎないのである。一時的に対処すれば、いったんは落ち着く。
売上は少し戻り、人の退社も止まったように見える。
だが、しばらくすると、また同じ問題が形を変えて現れる。
それを「運が悪い」「景気が悪い」「人材がいない」と片づけてしまうところに、実は大きな問題がある。
そもそも、多くの中小企業の経営者がやっているのは、経営ではなく、作業である。
この事実に気づかない限り、売上が回復しても、利益が出ても、人が一時的に定着しても、会社は同じところでつまずき続ける。

経営と作業は、似ているようでまったく違う。
作業とは、「自分が動いて成果を出すこと」だ。
営業に出る、現場に入る、書類をつくる、トラブルに対応する。
どれも重要な仕事であり、否定されるものではない。


一方、経営とは何か。
それは、「自分が動かなくても、成果が出続ける状態をつくること」だ。
人が育ち、判断基準が共有され、組織が同じ方向を向いて動く。
その土台と構造をつくることが、経営者の本来の役割である。
ところが多くの経営者は、この二つを混同している。

忙しく現場を走り回っている自分を見て、「自分は誰よりも働いている」「だから経営をしている」と錯覚してしまう。
だが、それは経営ではない。責任の重い“作業者”になっているだけだ。

ここで、よく聞く言葉がある。
「景気が悪いから仕方がない」という言葉だ。
確かに、景気や経済に大きく左右される業種は存在する。
良いときは一気に仕事が増え、悪くなると極端に冷え込む。
売上は落ち、利益は出ず、やがて資金繰りにまで影響が及ぶ。
こうした業種があること自体は、否定できない事実だ。
しかし、冷静に見てほしい。
同じ業界、同じ経済環境の中でも、きちんと利益を出し続けている会社は、確かに存在している。
では、その違いは何なのか。
景気か。
業種か。
運か。
違う。
決定的に違うのは、経営をしているか、作業をしているか、それだけである。

ここで一つ、具体的な話をしてみよう。
経営相談で最も多い言葉の一つが、「利益が出ない」というものだ。
では、その利益とは何なのか。どうやって生まれ、どうやって守られるものなのか。
そこまで理解している経営者は、実は多くない。


例えば、営業が取引先に見積もりを出すとしよう。
業種は何でもいい。
ITでも、建設業でも、製造業でも構わない。
仮に、100万円の見積もりを出し、受注したとする。
この100万円の中身はどうなっているのか。
原価はいくらで、利益はいくら残るのか。
この問いに、即答できるだろうか。さらに言えば、その原価と利益を、現場の人間は理解しているだろうか。
仮に原価が80万円であれば、残りの20万円が利益だ。
この原価の範囲内で作業を終えなければ利益は出ない。
それは、極めて当たり前の話である。


しかし現実には、原価も利益も共有されていない現場が多い。
「仕事を終わらせること」だけが目的になり、時間がかかっても、手戻りが出ても、
誰もそれを問題だとは思わない。
結果として何が起きるか。
20万円の利益食い、気づかぬうちに、余分な現金がでる。
そして最後に、経営者がこう言う。
「なぜか利益が出ない」。
これは努力不足の問題ではない。
能力の問題でもない。
経営が、作業に落ちている状態なのだ。
作業の視点では、「100万円の仕事を受注した」という事実で満足してしまう。
だが、経営の視点では違う。「その仕事は、どれだけの利益を生み、その利益を守る設計になっているのか」ここまで考えて、初めて経営になる。

原価を意識しない現場は、無意識のうちに会社の体力を削る。
それを防ぐのが、仕組みであり、教育であり、経営者の役割だ。
なぜ経営者ほど、作業に戻ってしまうのか。
作業は結果が見えやすく、やればすぐに手応えがあるからだ。
一方、経営は時間がかかり、正解も見えにくい。
だから不安になると、人は無意識に作業に逃げる。
だが、その結果、社長がいないと決まらない会社になる。
社長が止まると、組織も止まる。人は指示待ちになり、社長はさらに忙しくなる。

これは努力不足の問題ではない。立ち位置を間違えているだけだ。
本当の経営者の仕事は、「自分が頑張ること」ではない。
「人が正しく頑張れる状態をつくること」だ。
忙しい経営者ほど、一度立ち止まって考えてほしい。
自分は今、経営をしているのか。
それとも、経営者という立場で作業をしているだけなのか。

会社を変える第一歩は、新しい施策でも、制度でもない。
経営と作業を、はっきり区別することだ。
その線を引いた瞬間から、会社の未来は、静かに、しかも確実に変わり始めるのである。

「管理職が本当に育つ組織づくりのポイントや、社長が現場から離れるための仕組みを知りたい方はこちらをご覧ください。」

CONTACT
お問い合わせ

株式会社マネジメントオフィス・Kについての
ご意見やご質問は
お気軽に以下のフォームより
お問い合わせください。