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管理職が動かないのは育成不足ではなく、会社の“定義不足”にある

多くの会社で、管理職が思うように機能しないのは、よく「育成不足」「能力不足」と片付けられがちです。しかし、現場を見ていると、そうではありません。本当の問題は、会社側が管理職の役割を定義できていないことにあります。管理職とは何をする人なのか。どこまで権限を与え、どこまで責任を取らせるのか。こうした基本的なルールが言語化されていないまま、役職だけ与えられる会社は少なくありません。

例えば、ある中小企業では、課長クラスが日々の作業を自分でこなすだけで、部下の育成やチーム全体の業務改善には手を回せず、結果的に社長が現場を取り仕切る“属人化構造”が生まれていました。別の会社では、管理職がただの労働者の延長線上に置かれ、権限や裁量を持たないまま業務をこなすだけになっていることもあります。中には、権限を与えられていても「自分は役職者だから偉い」という誤解から、部下に経験を積ませる機会を作らず、誰でもできる仕事だけを任せて、自分しかできない仕事を抱え込むケースもあります。こうした状況では、部下は成長できず、やりがいも感じられずに離職し、管理職も本来の役割を果たせないまま、社長だけが忙しさを背負うことになります。

管理職の仕事とは何か

管理職の仕事は、単に「部下を指導すること」「自分で仕事をこなすこと」だけではありません。本質は、会社の理念を現場に浸透させ、組織全体が正しい方向に動く仕組みを作ることです。管理職がその役割を果たせない組織では、どれだけ優秀な人材を置いても成果は限定的で、社長だけが常に現場に引き戻される状態が続きます。
具体的には、管理職には大きく2つの責任があります。

1.経営理念の浸透
管理職は、会社の理念や方針を単に部下に伝えるだけでなく、日々の行動や判断に落とし込み、部下が自分の仕事の中で体現できる状態にする役割を担います。理念が浸透していない現場では、同じ指示を出しても、部下によって解釈や行動が異なり、チームの成果はバラバラになります。管理職は理念を「行動に変換する翻訳者」であり、現場の判断基準を統一する存在なのです。

2.部下の育成責任
管理職は単なる作業者の監督者ではなく、部下を成長させる責任を負います。ここで重要なのは、部下に「任せる仕事」と「学ばせる仕事」を明確に区別し、成長の機会を意図的に設計することです。多くの管理職は、自分しかできない業務を抱え込み、誰でもできる仕事だけを部下に任せる傾向があります。結果として、部下は成長できず、やりがいや達成感も感じられません。管理職自身も本来の役割を果たせず、組織全体が社長依存のまま固定されてしまいます。
管理職の責任は、この2つを軸にした上で、日々の業務管理や計画実行、業績責任、改善活動、報告といった具体的な業務を適切に組み合わせることにあります。理念浸透と部下育成という根本的な2つの責任を果たして初めて、管理職は組織を正しく動かすことができるのです。

業務に伴う4つの責任

管理職の仕事は、経営理念の浸透や部下育成といった根本的な責任だけで完結するものではありません。日々の業務を通じて、組織を動かすための具体的な責任も伴います。これを明確に理解していない管理職が多く、結果として「自分は管理職なのに何をすべきか分からない」という状況が生まれてしまいます。ここでは、特に重要な4つの責任を具体例とともに解説します。

1.業績の責任
管理職は、自部門やチームの目標達成に対して直接的な責任を持ちます。単に数字を追うだけでなく、部下の能力や作業量を踏まえた現実的な目標設定、成果に結びつく業務の優先順位付け、進捗確認が求められます。例えば、営業部門の管理職であれば、単に売上数字を確認するだけでなく、部下が取引先とどうコミュニケーションしているか、どのプロセスで停滞が起きているかを把握する必要があります。ここでの失敗は、数字だけでなく部下の成長機会の損失にも直結します。

2.業務改善の責任
管理職は、現場の業務プロセスやチームの運営方法を分析し、より効率的かつ効果的に改善していく役割を持っています。多くの現場では、業務改善が「社長の役割」と勘違いされるか、現場の個人任せになっています。結果として、改善の機会は後回しになり、同じ問題が繰り返されます。管理職は、部下の作業の無駄や重複を整理し、改善策を設計して実行まで導く責任があります。ここで重要なのは、改善を押し付けるのではなく、部下自身に「考え、提案させる」環境をつくることです。

3.報告の責任
管理職は、現場の状況や問題点を上司に適切に報告する義務があります。単に「問題がある」と伝えるだけではなく、原因分析や改善案を添えることで、意思決定がスムーズになります。多くの組織で報告が不十分な理由は、管理職自身が「上司に責任を押し付ける」意識になっているか、情報の整理方法を知らないことにあります。この責任を果たすことで、組織全体の透明性が高まり、社長や上層部も現場の状況を正確に把握できます。

4.計画実行の責任
計画の立案だけでなく、管理職は部下に任せた業務が計画通りに進むよう、進捗管理や調整、フォローを行う責任があります。部下に任せた仕事が停滞しても、ただ見守るだけではなく、原因を分析し、必要に応じてサポートや指示を出すのが管理職の役割です。ここで重要なのは「自分が手を出す範囲」と「部下に任せる範囲」を明確にし、権限と責任を一致させることです。

これら4つの責任を、経営理念の浸透や部下育成と組み合わせて果たすことが、真の意味での管理職の仕事です。理念の理解なくして業務管理だけを追求しても、部下の成長は止まり、組織全体の成果も上がりません。逆に、業務の責任を放棄して理念浸透だけに注力しても、現場は混乱し、部下は成果を実感できません。管理職は「理念を現場に落とし込み、部下を成長させながら、日々の業務を成果につなげる存在」であることを、組織全体で共有することが重要です。

「5つの責任+1」の全体像
上記4つの業務責任に、先ほどの経営理念の浸透を加えると、管理職の本質は「5つの責任+1」として整理できます。

・経営理念の浸透

・部下育成責任

・業績の責任

・業務改善の責任

・報告責任

・計画実行責任

この構造が明確でない会社では、管理職は自分の役割を勘違いし、権限を誤解することが多くあります。

権限の誤解が育成を妨げる

管理職には、大きく分けて2種類の権限があります。

・自ら行動して仕事を遂行する権限

・部下を使って仕事を進める権限

多くの会社では、この2つ目の「部下を使う権限」が正しく理解されていません。管理職自身が「役職がある=自分は偉い」と勘違いしてしまうケースが非常に多いのです。この誤解が生む現場の問題は深刻です。
たとえば、部下に任せるべき業務を自分で抱え込み、結果として自分しかできない業務ばかり増えてしまうケースがあります。しかし本当の問題は、「部下に仕事を任せ、経験を積ませる」という視点が欠けていることです。管理職は権限を「自分の力を誇示するための権力」と捉えるのではなく、「部下を動かし、成長させるための権利」として使う必要があります。
この誤解が続くと、部下は次のような状況に陥ります。

任される業務は簡単すぎて成長の機会がない

「難しい業務は管理職が抱え込むため、挑戦できない」「成果が自分に帰属せず、やりがいを感じられない」その結果、部下は意欲を失い、離職率の増加にもつながります。一方で管理職自身は「自分がやった方が早い」と感じ、ますます部下に任せない構造が強化されます。こうした状況では、組織全体が“社長待ち”の状態になり、社長だけが常に多忙を強いられる構造が完成してしまいます。

さらに問題を複雑にしているのが、管理職自身の認識です。「部下に任せる=仕事を丸投げすること」と誤解してしまうことがあります。本来の権限とは、部下の能力に応じて指示を調整し、失敗を経験として学ばせ、必要なサポートを提供することです。権限の本質を理解しないまま業務を進めると、部下は成長せず、管理職も孤立し、組織全体の生産性が低下します。
つまり、管理職が権限を誤解している限り、部下は育たず、社長は現場を離れられません。権限を正しく理解し、使いこなすことは、管理職自身の成長だけでなく、組織全体の持続的な成長に直結するのです。

役割を明確にすれば、管理職は育つ

管理職が思うように育たない理由の多くは、単に能力や意欲の不足ではなく、会社側が「管理職の役割」を明確にしていないことにあります。役割が不明確なままでは、判断の基準も権限の範囲もあいまいになり、結果として管理職は迷いや不安の中で仕事をすることになります。
では、管理職を育てるためには何が必要でしょうか。ポイントは次の4つです。

判断基準を言語化する
 業務判断の基準が曖昧なままでは、管理職は自分で意思決定することをためらいます。「どこまで判断してよいか」「どこまでリスクを許容してよいか」を明文化し、具体例とともに伝えることで、管理職は迷わず行動できるようになります。

権限と責任の範囲を明確にする
 権限と責任の境界を曖昧にしておくと、管理職は過剰に仕事を抱え込むか、逆に部下に丸投げしてしまうかの二択に陥ります。権限を与える範囲と責任の範囲をはっきりさせることで、管理職は自分の役割を正しく理解し、部下の指導や業務改善に集中できるようになります。

失敗を許容する仕組みを整える
 失敗を恐れる管理職は、リスクを避けるあまり部下に業務を任せられず、自分で抱え込んでしまいます。失敗を許容し、必要に応じてフォローする仕組みを整えることが重要です。これにより、管理職は安心して部下に権限を委譲でき、部下も経験を通じて成長します。

社長が「任せきる覚悟」を持つ
 最終判断が常に社長に戻る組織では、管理職は自ら考えて動くことを学べません。社長自身が「ここまで任せる」と明確に覚悟を持ち、実際に任せることが、管理職の主体性を育てる最大の条件です。

これらのポイントが整うと、管理職は「自分の役割」を理解し、自律的に行動できるようになります。業務改善や部下育成は自然に進み、組織は社長依存から脱却します。重要なのは、人を変えようとするのではなく、構造を変えることです。役割、権限、責任、判断基準を整理し、任せる前提を組織に組み込むだけで、管理職は育ち、組織は動き始めます。

まとめ

管理職が動かない、育たないのは、研修や教育の不足ではなく、会社が役割を定義できていないことが原因です。
管理職の仕事は、経営理念を浸透させ、部下を育てること。業務上の責任は、業績・業務改善・報告・計画実行の4つ。これを合わせて「5つの責任+1」です。
権限の誤解を解き、役割を明確にすれば、管理職は自然に育ち、組織は社長依存から脱却できます。
まずは自社の管理職がどの権限を正しく理解しているか、どの責任が曖昧かを整理することから始めましょう。構造を変えるだけで、管理職は動き、組織は動き出すのです。

「管理職が本当に育つ組織づくりのポイントや、社長が現場から離れるための仕組みを知りたい方はこちらをご覧ください。」☞「管理職が育たず、社長だけが忙しい会社に共通する経営構造の欠陥」

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