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理念なき経営では、人はついてこない ― 経営者が知るべき人材定着の本質

人手不足の現実と一時的な対策

世の中、人手不足の会社は後を絶ちません。
あなたの会社も、もしかすると例外ではないかもしれません。社員の不足を補うために、研修生として外国から働き手を受け入れている。しかし、研修期間が終われば彼らは帰国し、また新たな人材を受け入れる……その繰り返しです。既存の社員は年齢を重ね、組織の中心は変わらない。穴を埋めるだけの経営を続けていても、根本的な解決にはなりません。

社長、あなたは毎日、数字に追われ、資金繰りに頭を抱えていませんか?
その姿を社員は冷静に見ています。「うちの会社には未来がないのかもしれない」「この社長の下で働き続けていいのだろうか」――そう思った瞬間、人は離れ始めます。あなたが数字や計画に必死になればなるほど、社員の心は少しずつ冷めていくのです。

問題の本質は人手不足ではない

問題の本質は何でしょうか。単なる人手不足でしょうか。いいえ、そうではありません。会社に人が定着しない理由、社員が自ら成長しようとしない理由、組織が停滞する理由――その根本には、**「理念なき経営」**が隠れているのです。

人が会社に残り、成長するかどうかは、理念に共感できるかどうかで決まります。単に日々の仕事をこなし、数字だけを追う職場では、社員は「仕事はこなすもの」としか考えません。どれだけ成果を出しても、やりがいを感じられなければ、人は早晩辞めてしまいます。

たとえば、毎日同じ業務を繰り返す社員がいたとします。上司は数字だけを追い、進捗や達成度ばかりを確認する。社員はその瞬間、「自分の仕事は数字を埋める作業なのか」と思い、モチベーションを失います。成果を出しても評価は同じで、心が動かされることはありません。そんな状態では、人は目の前の作業しか見えず、成長も感じられないまま離職の道を選ぶでしょう。

理念の力が組織を支える

しかし、会社に明確な理念があり、「なぜこの仕事をするのか」「どんな社会をつくりたいのか」が日々の業務に反映されている場合、社員の目は変わります。自分の役割が組織の大きな目的につながると理解し、日々の仕事に意味を見いだせるのです。理念は、社員にとっての“軸”となり、迷ったときの判断基準になります。

多くの経営者は、売上や利益、資金繰りに追われ、事業の数字だけに注力しがちです。それ自体は間違いではありません。しかし、理念が抜けた経営では、組織の中心軸は揺らぎます。結果として、人手不足を一時的に外国人研修生などで埋めても、組織の文化は変わりません。社員が育たず、ノウハウは属人的なまま。結局、同じ課題が次の年にも繰り返されるのです。

ここで考えてみてください。あなたの会社では、社員が自ら学び、挑戦する環境を整えていますか? 数字だけを追う経営ではなく、理念を日々の行動で体現していますか?

理念を掲げ、経営者自らがそれを示すことで、組織は自然と人が集まる場になります。社員は指示に従うだけでなく、自分も理念の一部として成長し、会社を支える力となるのです。経営とは単なる事業の遂行ではなく、理念を通して組織と人を導く「生き方そのもの」と言えます。

経営とは「経」と「営」のバランス

経営という言葉の本来の意味を知ると、現代の経営の本質がより鮮明に見えてきます。古代中国の記録によれば、周の文王が土地を区画し、統治する際に「これを経し、これを営す」と記されていました。この「経」とは縦の区画を切ること、つまり目標や戦略を意味します。「営」とは外郭を整えること、すなわち計画や組織の構築を指します。古くは土地の開墾や建築の段取りに使われた言葉ですが、現代では事業や組織の運営全般に通じる概念となっています。

つまり経営とは、目標や理念という縦軸(経)と、それを実現する計画や組織という横軸(営)をバランスよく整えることです。どちらか一方だけに偏れば、組織は揺らぎ、人は離れます。理念だけ掲げて運営が伴わなければ絵に描いた餅になり、計画や組織だけ整えても、社員は「なぜこの仕事をするのか」がわからず、心が動きません。

現代の会社でも同じことが言えます。理念を示しつつ、計画や組織を整えて実行する経営者は、社員が自然と集まり、成長を促す場を作ることができます。理念と実行の両輪を回し続ける経営――これこそが、社員が辞めずに成長する会社の条件です。

理念経営の具体例と効果

社員が辞める典型的なパターンは、意外とシンプルです。まず、「自分の仕事の意味がわからない」と感じるケース。毎日同じ作業を繰り返し、数字や納期だけが評価の基準になっている職場では、社員はやりがいを感じられません。「自分は何のために働いているのか」と考えた瞬間、離職の意識が芽生えます。

次に、「会社の方向性がブレる」場合です。方針が頻繁に変わり、上層部の判断が一貫していないと、社員は信頼感を失います。「あの人たちは何を考えているのだろう」「ここで頑張っても無駄かもしれない」と思えば、心が離れていきます。

また、「評価や待遇に人間らしさがない」ことも大きな理由です。数字や作業量だけで判断されると、社員は自分が会社にとって道具のように扱われていると感じます。「成果を出しても認められない」「自分は大事にされていない」と思った瞬間、転職は早まります。

逆に、理念を軸にした経営が機能している会社では、採用時から理念の共有を重視します。社員が自分の価値観と会社の理念を重ね合わせられるかを確認し、入社後も日々の業務で理念がどう生かされているかを明確にします。上司も自らの行動で示すのです。

その結果、社員は「自分の仕事が社会にどう貢献しているか」を理解し、自発的に学び、挑戦するようになります。数字や売上はもちろん重要ですが、それ以上に理念を中心に置くことで、社員は仕事を単なる作業ではなく、自分の成長の場と捉えるようになるのです。

理念経営のもうひとつの効果は採用段階でも現れます。理念に共感する人が自然と集まり、最初から社風にマッチした人材を迎えられるため、教育コストやミスマッチが減ります。結果として、人手不足を穴埋めで補う必要が大幅に減り、会社の体質は安定します。

社員の離職の理由を把握し、理念を中心に据えた経営を行うことは、単なる理想論ではありません。数字や計画、組織作りと同じくらい重要な、会社を持続可能にする“生きた戦略”なのです。理念を明確にし、それを体現する経営者の姿こそが、社員の心をつかみ、組織を強くする最大の力となります。

まとめ

ここまで読んで、あなたは自分の会社の現実にハッとしたかもしれません。社員が辞めていく理由、人手不足の穴埋めに追われる日々、計画や数字に追われる自分――そのどれもが、理念の欠如という根本原因に通じています。

理念なき経営では、どんなにお金や時間を注いでも、組織は揺らぎ、社員は離れていきます。逆に、理念を明確にし、それを日々の行動で体現できる経営者の下では、社員は自ら考え、成長し、会社を支える力となります。理念は単なる飾りではなく、社員にとっての“軸”であり、会社を動かす原動力なのです。

あなたの会社の理念は、社員にどれだけ伝わっていますか?
理念を数字や計画だけで押し通す経営になっていませんか?
今のままの経営で、社員はあなたと共に成長し続けられるでしょうか?

もし一つでも「答えがはっきりしない」と思う項目があれば、今こそ立ち止まるべきです。理念を再確認し、組織に浸透させる努力を始めること。これが、人手不足や停滞を根本から変える第一歩です。

経営とは、単なる事業の遂行ではありません。理念を示し、それを通して組織と人を導く“生き方”そのものです。社員が自ら集まり、成長する会社をつくるために、あなたはどのように行動しますか?

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