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求人票を出す前に知るべき「人手不足倒産」の正体

――なぜ、あなたの会社は“採用”で解決しようとして失敗するのか?

「ハローワークに求人を出しても反応がない」 「高い広告費を払って採用しても、半年も経たずに辞めていく」多くの社長は、これを「労働市場のせい」や「今の若者の根性のなさ」のせいにします。しかし、現実は違います。倒産や廃業に追い込まれる会社の本質は、人が足りないことではありません。**「人が育たず、定着もできない欠陥構造」**を抱えたまま、採用という対症療法を繰り返していることにあります。

25年前に「止まった時計」――ある製造業の社長が選んだ、緩やかな自滅への道

今から25年前、私はある製造業のセミナーで一人の社長に出会いました。当時、社長は60代。血気盛んで、会社の将来を憂う、どこにでもいる「一生懸命な経営者」でした。

当時のその会社は、利益率の低い仕事を数でこなし、なんとか資金繰りを回している状態。私は社長にこうアドバイスをしました。 「社長、今のままではジリ貧です。生産性を上げ、若手に技術を継承し、もっと付加価値の高い仕事へチャレンジする構造を作りましょう」

しかし、社長の答えはこうでした。 「川原さん、今は若手に教えている余裕なんてないんだ。今のベテラン連中に、これ以上のことをやれと言うのも酷だし、まずは今の仕事を回すので精一杯なんだよ」

「今は無理だ」「余裕がない」。 その言葉を最後に、私はその会社を去りました。

25年後の再会。そこにあったのは「倒産すらできない」現実

先日、ふとその会社のことが気になり、25年ぶりに状況を調べました。 驚いたことに、会社はまだ存続していました。社長も健在です。しかし、そこにあったのは「継続」ではなく「停滞」、いえ「腐敗」に近い状態でした。

〇後継者は不在: 魅力のない組織に、息子も他人も継ごうとはしない。

〇社員の超高齢化: 25年前のベテランはそのまま高齢者となり、新しい技術も、改善も受け入れられない。

〇技術の断絶: 「教える余裕がない」と言い続けた結果、若手は一人も残らず、技術は継承されないまま消えようとしている。

社長は今も、辞めていくことも、倒産させることもできず、ただ沈みゆく船の上で立ち尽くしています。25年前に「構造」を変えることを後回しにした代償は、あまりにも残酷な形で現れていました。

景気という「神頼み」が、組織を殺す

25年前、あの社長の背中を押したのは「いつか景気が良くなれば、また利益のいい仕事が舞い込んでくるはずだ」という、根拠のない期待でした。

外部を入れてまで改革や改善をしても、仕事の量や利益率は変わらない。現場は利益率は悪い仕事だが、業務は流れている。このまま経済が上向けば、すべては良くなるだろう……。 そんな安易な考えが、25年という歳月を奪ったのです。

しかし、現実はどうだったか。 経済の波は何度も来ましたが、その波に乗れるのは「準備ができていた会社」だけです。景気が上がれば、穴の空いたバケツにも水は溜まりますが、景気が冷え込めば真っ先に空になる。そして、バケツの穴(構造上の欠陥)は放置されるほど、年々大きくなっていくのです。

「現場が流れている」という錯覚

「利益率は悪いが、業務は流れている」。 この言葉は、経営者にとって最も危険な「麻薬」です。

業務が流れているのは、ベテランが身を粉にして、昔ながらのやり方で支えているからです。それは「健全な経営」ではなく、「個人の犠牲の上に成り立つ綱渡り」に過ぎません。その綱を支えるベテランが70代、80代になったとき、綱は音を立てて切れます。

若手はバカではありません。 「教育体制がない(=ベテランの背中を見ろ)」 「構造がない(=場当たり的な判断ばかり)」 「未来がない(=高齢者だけの停滞した空気)」 そんな現場に、自分の人生を預けようとする若者がいるでしょうか。採用広告に100万円かけても、会社の中に「人を育てる構造」がなければ、それは穴の空いたバケツに水を注ぐのと同じなのです。

結論:解決策は「採用」ではなく「構造の再設計」

もし私が、25年前のあの社長に、もう一度だけ言葉をかけられるとしたら、こう言います。 「社長、経済は元に戻っても、あなたの社員の若さは二度と戻らないんですよ」

人を育てることもしない組織に、未来はありません。しかし、悪いのは「人」ではなく「構造」です。 今、この記事を読んでいる経営者の皆様。「今は余裕がない」という言葉で、構造改革を先送りにしていませんか?

25年後、あなたの会社が「倒産すらできない会社」にならないために。 今、着手すべきは採用広告の更新ではなく、「人に仕事が張り付く構造」を根底から壊すことです。

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