
会社には寿命があります。しかし、人間と違い、会社はそこで働く「人」によってその寿命を延ばすことができます。 名古屋の多くの経営者が「業績を上げる戦略」や「技術教育」には心血を注ぎますが、肝心の「人の育成」を後回しにしています。その結果、組織から「信頼」と「方向性」が失われ、会社は音を立てて衰退期へと向かっていきます。
なぜ、教育をしても組織は強くならないのか。なぜ、方針を語っても社員は去っていくのか。その真実を、会社の成長サイクルという「道理」から紐解きます。
1.成長の裏で進行する「信頼の腐敗」:売上増は七難隠す
創業期から成長期にかけて、売上が伸びている時期は、経営者にとって最もやりがいを感じる時です。しかし、ここが最大の落とし穴です。 「売上増は七難隠す」という言葉があります。業績が良いときは、組織内の歪みや社員の不信感、管理職の能力不足といった問題がすべて水面下に隠れてしまいます。
この時期、多くの経営者は「仕事ができる人」や「長年勤めた人」を安易に管理職に据えます。しかし、本来組織の柱となるべき管理職に必要なのは、技術や年数ではなく「人間性の善意」です。 人間性を無視した登用は、組織内の信頼関係をじわじわと蝕みます。やがて成熟期を迎え、売上が安定した瞬間に、それまで隠れていた「不信感」が一気に露呈し、取り返しのつかない組織崩壊を招くのです。
2.「方向性」が「暗黙のルール」に飲み込まれる恐怖
組織が大きくなれば、社規則や就業規則といった「明文化されたルール」が必要になります。これは責任の範囲を明確にし、社員に安心感を与えるためのものです。 しかし、人の育成を怠り、信頼関係が形骸化した組織では、規則は「意味をなさない紙クズ」と化します。
そこで何が起きるか。経営者の知らないところで、現場の人間たちが勝手に作り上げた「暗黙のルール(歪んだ社風)」が組織を支配し始めます。・志のある優秀な社員は、この閉塞感に絶望して退職する。・残るのは、保身に走り、事なかれ主義で業務を回す人達だけ。こうなると、経営者がいくら「方向性」を語っても、現場の暗黙のルールという分厚い壁に跳ね返され、理念は「絵に描いた餅」に成り下がります。
3.「も」の会社から抜け出せない構造的理由
あなたの会社の商材やサービスは、以下のどれに当てはまりますか?
①あなたの会社しかないもの
②あなたの会社ができるこ
③あなたの会社もできること
世の中の8割、9割の会社は「3(も)」の状態にあります。「も」の会社は、常に価格競争の中にさらされ、余裕がありません。余裕がないからこそ、人の育成よりも目先の業績を優先してしまいます。
結果として、社員は「自分がこの会社で働く意味」を見失い、組織の方向性は霧散します。 一方で、業績が常に安定している「しか」「が」の会社は、知識や技術以上に「人としての育成(徳や倫理観)」に前向きです。人としての根っこが育っているからこそ、社員同士の信頼が厚く、全員が同じ方向を向いて困難を突破できるのです。
4.経営という土俵から降りる「既往のしわ寄せ」
毎年、多くの会社が経営という土俵から去っていきます。その理由の多くは「売上の減少」と報告されますが、その裏にある真の理由は「既往(きおう)のしわ寄せ」、すなわち長期にわたる組織の放置です。
長期的に業績が悪化しているのに関わらず、人の育成をせず、信頼関係を放置し、方向性を見失ったまま走り続けた結果、気づいたときには手遅れになっている。 これは「不運」ではなく、人の育成を忘れた「自業自得」の結果でしかありません。
結論:信頼と方向性は「人」の中にしか宿らない
戦略やシステムは、人が辞めれば会社には残りません。しかし、育てられた「人」の中に宿る信頼と、共有された方向性は、会社の寿命を延ばす唯一の「資産」となります。
社員が「自分が正しいのか分からない」と不安になり、会社を去るのは、あなたが「実(利益)」ばかりを見て、「根(人の育成)」に水をやることを忘れたからです。
あなたの会社は、価格競争に明け暮れる「も」の会社で終わるのか。それとも、人を育て、信頼という土壌を耕し、「しか」「が」と言われる唯一無二の存在へ進化するのか。その分岐点は、今この瞬間の「人の育成」への向き合い方にあります。
※「人が辞める理由は、やる気でも能力でもない。社員が“安心して踏みとどまれない構造”があるだけだ。」