この話はリーマンショック時、資金繰りに苦しむ自動車部品製造3次下請けをしている兄弟で経営している会社の話です。
大手自動車メーカーの下請けとして50年以上続き、親の代から受け継いだ会社で、兄が社長、弟が専務、従業員は60名の会社でした。
自動車部品製造会社の社長をここではB社長としましょう。
ある日、私の所にB社長が来社されたのです。
身長が180㎝ぐらい、体型的には細身で顔立ちから優しそうな方で、表情は少し暗かったのです。
B社長のお悩みは先代から仕えている年配の営業マンで、売上は上げているが利益が上がらない、何とか利益がでるような行動をさせる方法はないかということを私に相談しに来たのです。
二時間ぐらいB社長から色々と説明を受け、一度社員面談とアンケートの実施することになりました。(俗に言う社内調査)
社内調査当日、この日の調査から1週間かけて社員面談を実施、その間アンケート調査を行うのです。
社員面談は一人一人と面談をし、聞く内容はいたってシンプルです。
この会社の社風はどうか?この会社の問題点は何か?業務フローはどうか?営業部はどうか?・・・・
社員面談で一番注意しなければならないことは、固有名詞をだしてあらぬ方向にもっていかないことです。あくまで利益や売上を出せない問題は何かを探ることなのです。
しかし、面談を進めていくと、この会社の実態が分かってきたのです。その実態は目標となる数字がなく、誰が経営者で誰がこの会社を仕切っているのかが不明だということでした。
また、アンケートを回収し分析してみると、ほとんどの従業員は不安を抱えており、組織が機能しておらず、個々の社員が個々の価値観で動いている状況でした。
私は思わず「だろうな」と思ったことを今でも覚えています。
だいぶ前にブログでも書いたと思いますが、トップがリーダーシップをとらないと組織の内部統制が取れず、幹部社員も従業員も業務の流れは単純に仕事をこなすだけとなり、そこには理念や思想はなく、責任も社内の協調性もなくなるのです。
この現実を兄の社長、弟の専務に突き付けたのですが、兄は泣きそうになり、弟は日頃から口数が少ないのに無口になるのです。
これはどのようにしたら良いかと考えるのですが、この兄弟が経営者でいる以上、内部統制は難しい、しかし、このままにしているわけにはいかないのです。
リーマンショック後、トヨタをはじめ、各社自動車メーカーの下請けは体力がない所は淘汰され、体力があるところは経営体力の強化や多角化を進めて行くのです。しかし、この会社は下請けといっても3次下請け、体力はなく、2次下請けから自社で製品を製造すると言われたら一巻の終わりなのです。
私は迷いました。迷いましたが仕事を受けた以上何とかしなければなりません。
なぜ、迷うのか? 経営者の言葉で多少なりとも従業員が動くのなら救いようがあるのですが、経営者の言葉で動かない従業員は、いくら外部のものだろうが何だろうが、辞めるか聞くかのどちらかになるのです。従業員にとって居心地が良い所をこわされるのですから・・・・
私はB社長に確認しました「社長、この会社の現状は説明しました。仮に従業員が半分になってもやっていく覚悟はありますか?」と聞きましたが、B社長は顔をゆがめたまま、返事はしないのです。
私は「返事がないのであれば、社長、改革はやめましょう」と言い放ちました。
しばらく考えたB社長は「やります」と小声で答えたのです。
その言葉を聞いてこの会社の再生に挑むのですが、ここからが大変でした。
続きは次のブログにて。