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「まだ大丈夫」が一番危ない資金繰りのサイン

月末。
通帳を開いて残高を確認し、ふっと肩の力を抜く。
「……まだ、何とかなるな」
そうつぶやいた瞬間、胸の奥に小さな不安が残るが、忙しさに紛れてそのまま閉じてしまう。
資金繰りが本当に危なくなる会社は、いきなり倒れたりはしない。倒れる前に、必ずこの「まだ大丈夫」という言葉が社長の口癖になる。
支払いはできている。銀行とも話はついている。数字だけ見れば、確かに“即死”ではない。


だがこの段階で、会社の中では別の異変が始まっている。
資金繰りが気になり出すと、社長の視野は一気に狭くなる。
頭の中を占めるのは、来週の支払い、来月の返済、その次の入金予定。
本来なら考えるべき「なぜ金が残らないのか」という問いは、後回しになる。
現場で何が起きているのか。誰が疲弊しているのか。どこで無駄なエネルギーが漏れているのか。
そういった話を聞く余裕が、少しずつ消えていく。


その変化は、必ず現場に伝わる。
社員が何か提案をしても、返ってくるのは決まって「で、いくらかかる?」という言葉。
新しい挑戦は止まり、修繕や備品の購入すら「今は我慢だ」で終わる。
誰も文句は言わない。ただ、黙るだけだ。
現場はとても正直だ。社長が余裕を失えば、空気は一瞬で重くなる。
やがて社員は「言っても無駄だ」と学習し、必要な報告すら上げなくなる。
この状態が一番怖い。


数字上は“まだ大丈夫”なのに、組織はすでに内側から崩れ始めている。
資金繰りの不安は、社長の判断力を奪う。
焦りの中で、耳障りのいい成功事例や、簡単に売上が上がりそうな話に引き寄せられる。
だが、土台が弱った組織に新しい仕組みを入れても、期待通りには回らない。
金は出ていく。
現場は動かない。
そしてまた通帳を見て、「まだ大丈夫だ」と自分に言い聞かせる。


はっきり言う。
通帳の残高がゼロになる前に、組織の心は折れている。資金繰りの問題は、数字の問題ではない。
経営構造と、社長の向き合い方の問題だ。


もし今、「まだ大丈夫」と思いながらこの文章を読んでいるなら。
それは危機のサインではなく、立ち止まれる最後の合図かもしれない。
ここで、もう一つだけはっきりさせておきたい。
資金繰りが苦しくなる原因を、
「売上が落ちたから」
「原価が上がったから」
「景気が悪いから」
そうやって外に求め始めた瞬間、経営は一段深いところで歪み始める。
確かに、数字の変化は引き金になる。
だが、資金繰りを本当に悪化させるのは、数字そのものではない。判断が遅れること。向き合うべき問いから目を逸らすこと。


そして、組織の声が聞こえなくなること。
この三つが重なったとき、会社は静かに沈んでいく。
資金繰りが不安になると、社長は「今すぐ効く薬」を探し始める。助成金、補助金、値上げ、営業強化、新しい商品。どれも間違いではない。
だが、それらはあくまで“対処”であって、“治療”ではない。本当に問うべきなのは、もっと嫌な問いだ。
なぜ、忙しいのに利益が残らないのか。
なぜ、社員は覇気がないのか。 
なぜ、現場から前向きな提案が消えたのか。


これらはすべて、
資金繰りが悪化する「前」に、必ず現れる兆候だ。
だが多くの社長は、ここを見ない。見ないのではなく、見たくないのだ。
なぜなら、その答えはたいてい、「仕組み」や「人」ではなく、自分の経営の向き合い方に行き着くからだ。

・現場を信じ切れていただろうか。
・任せると言いながら、口を出しすぎていなかったか。
短期の数字に追われ、長期の土台づくりを後回しにしていなかったか。
資金繰りが苦しい会社ほど、社長は孤独になる。誰にも弱音を吐けず、誰にも本音を話せず、一人で通帳と向き合う時間が増えていく。
だが、そこで一人で耐え続けることが「経営者として強いこと」ではない。

むしろ逆だ。会社が傾き始めるとき、最初に壊れるのはお金でも、取引先でもない。“相談できる関係”が壊れる。現場に聞けなくなる。社員に頼れなくなる。そして最後は、自分自身にも嘘をつくようになる。「まだ大丈夫だ」と。


もし今、資金繰りに少しでも不安を感じているなら。それは、会社を立て直すための“最後のチャンス”がまだ残っているということでもある。
数字が尽きる前に、人が離れる前に、組織の空気が完全に冷え切る前に。
向き合うべきなのは、資金調達の方法ではない。小手先の改善策でもない。経営の構造と、社長自身の立ち位置だ。そこに手を入れられる会社だけが、

「まだ大丈夫」を「ここから立て直せる」に変えていく。
もし今、「資金繰りの話なのに、なぜか胸に残った」そう感じたなら、それは数字の問題ではありません。資金繰りが苦しくなる会社には、必ず同じ構造があります。
・社長が現場から離れられない理由。
・人が育たず、判断が遅れ、手当たり次第に打ち手を探してしまう理由。
それらは、すべて一つにつながっています。

全国の経営者から寄せられてきた相談をもとに、「なぜ会社は静かに弱っていくのか」「どこで立て直しの分かれ道が生まれるのか」その構造を、整理してまとめています。

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